ある本で、「灰汁の清水を助け、塩酢の米麺の味を助くるが如し」という文章を見たんですが、どういう意味ですか?

ある本で、「灰汁の清水を助け、塩酢の米麺の味を助くるが如し」という文章を見たんですが、どういう意味ですか?

これは、総本山第二十六世日寛上人が、私たちの修行に正行と助行とある中で、助行の役割についてご説明なさった箇所です。
正行とは、御本尊様にお題目を唱えることで、助行とは方便品と寿量品とを読んで、正行甚深の功徳を弥増しし、また明らかにすることです。
それでは質問の御文について、少し解説を加えてみましょうね。
まず、「灰汁の清水を助け」という部分ですが、これは「かいじゅう」ではありません。
「あく」と読むのです。 「灰汁」とう言葉を「世界大百科事典」で調べてみますと、 「植物の水で浸出した液。この液は洗濯に有効で、しかも酸と相反する性質をもつ。主成分は、陸の植物の場合は炭酸カリウムなど、海の植物の場合は炭酸ナトリウムなどである。
あくづけ、アク抜きなどに使う」 などと書かれているところから、短絡して、「灰汁の清水を助け」とは、「たとえば洗濯をするときに、洗剤を加えて水の助けとする意味」とする場合が多いように見受けられます。 しかし、これでは「灰汁が清水を助ける」意味とはなりません。
これは、日寛上人の生きておられた時代背景を考慮にいれて解釈しなければなりません。 と言うのも、この時代、灰汁を使った画期的な方法が、ある物の生産効率を上げるのに革命?を起こしていたのです。
あるものとは「清酒」です。元は濁酒(だくしゅ—にごりざけ、どぶろく、もろみざけとも呼ぶ)を長時間掛けて沈殿するのを待って、その上澄みを取る静置法が主流だったのですが、江戸時代の初期に大阪の鴻池が濁酒に灰をいれてろ過する方法・いわゆる「灰澄まし法」を発見し、効率良くろ過・漉して透明にした〈澄み酒・清酒〉を作れるようになったのです。
これが今でも名残として、造り酒屋の軒先に、新酒が出来たことのデモンストレーションとして、杉の葉で作った丸い玉を下げるのです。
これを杉玉とか酒林とも呼ばれています。 それも、文政十二年板行の『北窓瑣談』という書には、「酒の今の如く清酒になりしは、わずかに百四五十年この方の事とぞ」とあるそうで、文政十二年板行と言えば西暦一八二九年ですから、それより百四五十年と言えば、一六七九年から一六八九年ごろの延宝年間ということになります。
日寛上人が『三重秘伝抄』を著わされたのが正徳三年(一七一三)、御登座あそばされたのが享保三年(一七一八)ですから、まさにその三十年後で流行の真っ盛り、ということで、これを例えに用いられたようです。 このように、濁った液体を澄んだ清水の状態にするのに有効なのが、この「灰汁」を加える方法なのです。
灰汁はこのように、濁り水を不透明な状態から透明な清水にするのを助けますから、私たちの唱える題目が、釈尊の法華経や、あるいは像法時代に、天台大師や伝教大師が唱えたものと同一なものかどうか不透明なものを、明確に、今よりさかのぼること久遠元初の時、名字凡身の御本仏が御修行あそばされた、いわゆる「本地の御自行」、これ真実の仏になる因なるゆえに「本因妙」と称し奉るのですが、これを私どもにお与え下された『三大秘法』と申し上げる、唯一の仏道修行であることを明らかににするために、この『方便品』と『寿量品』とを助行として拝読するのです。
「塩酢の米麺の味を助くるが如し」と言うのは、塩はお米の味を際立たせる。お酢も素麺の味を引き立たせるように、唱題の功徳を際立たせ、引き立てるのに、大いに力となるのです。
それで、唱題の助行とするのです。 これからの文章は、インターネット記事からの受け売りですが、平安・鎌倉時代の「延喜式」「天延二年記」「小右記」「中右記」「江家次第」「長秋記」などの記録によると、宮中での饗宴には必ず素麺が出され、酒のあと酢素麺を食べる習わしがあったようです。
酒でもてなした後、酢素麺を食べるのが最高の料理で、この方法が宮中から公家などの上流社会に伝わり、江戸時代に入ると、庶民も酒の後、酢素麺を食べる習慣になりました。
江戸時代も中期になると、地元で作られる醤油を使ったつゆが一般化し、醤油のつゆと酢を適宜に使い分けていたようです。
酢素麺は当時高級料理とされていました。
播州地方でも、昭和三十年代頃までは酢をベースとしたつゆが主流で、醤油を使ったつゆは少なかったようです。現在では、醤油ベースのつゆ(めんつゆ)が主流になり、酢素麺はあまり食べなくなったのは、皆さんご承知の通りです。
お酢で食べるから最高の料理で、宮中のもてなし料理の中でも特にこだわりがあったことを知る事ができます。
また、お米を食べるにしても、炊きたてのご飯を、塩をまぶして握ったおにぎりが最高の料理であることを、この三月に終了したNHKの朝の連続ドラマ「ごちそうさん」でも、主人公の差し出したおにぎりを、アメリカの進駐軍の将校までもが、こんな美味いものはないとばかりに目を丸くしてほおばっているのが、印象的に描かれていました。
このように、お酢も、現在のめんつゆも、麺の味を引き立てる、風味豊かにする。
あるいは、お塩も、ご飯をいよいよおいしくして、栄養を身につかせる大きな働きをもっていることが、私たちの修行の関係によく似ているので、これを、正行を助ける行・助行とするのです。
この方便品と寿量品、そして題目を唱えることで、迹門・本門・文底へと浅いところより次第に深い所に至り、寿量文底の三大秘法の題目という意義が具わることになるのです。
ゆえに、この助行と正行たる題目を合わせ行ずることで、本当の大益を得る事が出来るのです。 以上

 

 

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