皆さんは「みにくいアヒルの子」というお話を聞いたことがありますか。それは、こんな話でしたね。
あるおうちのお母さんアヒルに、たくさん、赤ちゃんアヒルが生まれました。
でも、その中に一匹だけちょっと変わった子供がいたんですね。
その子は、この、みんなとちょっとちがってる、ということから、いじめられたり、「やーい、やーい」と、からかわれたりしました。
でも、みんなが大きくなった時、なぜこの子の姿形や毛の色が、ほかの子供たちとちがっていたのか、その理由がわかったのです。
ほかのヒヨコはちゃんとあひるの大人になったけど、その子だけは、なんと「おとなの白鳥」になったのです。
みんなからいじめられてもがまんしたから、そのごほうびで美しい白鳥になれたのかな。そうではありませんね。その子は最初から白鳥の子供だったんですね。それが何かの拍子で、白鳥の卵がアヒルの巣にまぎれこんでいたのです。
最初はみんなと姿形や毛の色がちがっていたので「へーんなの」と思われていたけれど、大きくなってみれば、逆に相手が美しい白鳥になり、自分たちは、人間から見て見劣りのするあひるだった、というお話でしたね。
みんなの年ぐらいの頃、私はこの話を初めて聞いた時、この子はいじめられても我慢したから、大きくなって、「白鳥」というだれからも褒められる美しい鳥に成長することが出来たんだと、そういうふうに勘違いして受け止めていました。
我慢することは大切なことですが、まさか、アヒルが白鳥になることはできませんよね。
それに、この白鳥は、大きくなって初めて白鳥になったんではなくて、最初から白鳥だった、ということですよね。
この子が白鳥だなんて誰も知らなかったし、自分もまさか白鳥の子だなんて知りませんでした。
大きくなってみて、初めて、いじめられていた子が本当は白鳥の子で、いじめていた子たちはアヒルの子供だったと気づく、そういう話でした。
ところで、私たちはこの話のように、ちょっと自分たちと違うというだけでその子を仲間はずれにしたり、いじめたりすることはありませんか。
私たちの御本尊様のなかには、この地球の上にはいろんな人やさまざまな生き物がいるけれど、みんなそれぞれが大事なものであり、みんなおんなじ妙法蓮華経という尊い仏様の命であることを表わされています。
これを、日蓮大聖人様は、ちょっと難しいけれど「一切法は、皆仏法妙法妙法蓮華経なり」と、申されているのです。
一切法とは、これは後で、お父さんやお母さんから聞いてほしいんだけど、十界と言って、いろんな生き物すべて、そして私達人間の、これもまた様々な人がいるけど、これを全部含めたものを十界というんだよ。
だから、どんな人でも、どんな生き物でも、山や河だって、それに草や木や、色んな昆虫に動物、そしてこの大地や大空だって、お一人の仏様のお命、妙法蓮華経のお姿なんだ。
そして、一つ一つの姿がちがっているのは、仏様は「無作三身」と言うと、お教えくだされているんだよ。
これが本当の仏様のお姿なんだよと、法華経で初めて打ち明けて下さったんです。
皆、最初から、まばゆい宝石のような命を持っているのに、そういうことも知らず、自分のこともつまらないもののように考えたり、なぜ自分を大事にしなければならないか本当の理由も知らないものだから、結局、人も卑しんでいじめたりするのです。
日蓮大聖人さまは、まずご自分でみんなが本当の妙法蓮華経の仏様であることを修行してお悟りになって、これを誰もが同じように感じることができるように、私たち一人一人が本来仏であることをお示しになって、早くみんなも南無妙法蓮華経と唱えてしあわせになり、ほかの人も大事に思う人間になるよう、御本尊様を表して下さったのです。